日本体育科教育学会

日本体育科教育学会 第18回大会(国士舘大学)第2次案内

  -- 13/06/07..No.[97]

【シンポジウムについて】

■日時:6月22日(土)13:05〜16:50
13:05〜14:00 第1部 演者による発表および質疑応答
14:15〜15:15 第2部 演者による発表
15:30〜16:10  〃  分散会
16:20〜16:50  〃  全体会


緊急企画 「学校教育における運動部活動と体罰を問う」

<テーマ設定の趣旨>
運動部活動における「体罰」問題は、学校教育現場だけの問題として位置づけられるものではなく、社会問題として大きく取り上げられています。学校体育を学問対象とする日本体育科教育学会において、運動部活動における「体罰」問題は、運動部活動が学校教育とって必要か、存立そのものを問う必要のある極めて重要な問題です。
 また、体育科教育学・スポーツ教育学に関連する学会のなかで本学会は、2013年度に最も早い時期に開催されるため、体育科教育学・スポーツ教育学に関わる人たちが、学校における運動部活動の問題を、どのように受け止めて、どのように考えているのかを社会に発信する極めて重要な大会になります。
 そこで、2013年6月開催の日本体育科教育学会では、日本体育科教育学会として、運動部活動における「体罰」問題を真正面から受け止め,学校教育における運動部活動と体罰について問い直すことにしました.

○シンポジスト
 第1部 石川泰成先生 (文部科学省)
片山紀子先生 (国士舘大学)
 第2部 阿江美恵子先生(東京女子体育大学)
小田佳子先生 (東海学園大学)
神谷 拓先生 (宮城教育大学)
○総合司会 日野克博(愛媛大学)・大友智(立命館大学)・細越淳二(国士舘大学)
○分科会司会 三木ひろみ先生(筑波大学)
長見 真先生 (仙台大学)
丸山真司先生 (愛知県立大学)



<シンポジスト発表要旨>

第1部

@体罰に係わる実態把握の結果等について  石川泰成(文部科学省)
平成25年4月26日,文部科学省は「体罰に係わる実態把握の結果(第1次報告)」についてとりまとめ,児童生徒に対する体罰の実態を公表した(平成24年4月〜平成25年1月までに発生したもの).ここでは,体罰時の状況 (1)場面について では,授業中31.1%,部活動中27.6%(各校種の合計)の順で発生していることなどが公表されている.また,教育再生実行会議の「いじめの問題等への対応について(第一次提言)」(平成25年2月26日)では,体罰禁止の徹底と,子どもの意欲を引き出し,成長を促す部活動指導のガイドラインの策定が提言された.これを受け,文部科学省では平成25年3月,「運動部活動の在り方に関する調査研究協力者会議」を設置し,運動部活動における許されない指導とあるべき指導の一定の考え方や,子どもの意欲を引き出し,自発的行動から成長を促す運動部活動の指導のガイドラインの策定を進めている.
運動部活動中の体罰が背景にあると考えられる高校生の自殺事案の発生などを受け,体罰の根絶に向けた文部科学省の一連の対応と,上記調査結果や協力者会議の内容等について情報提供を行う.

Aアメリカの学校における体罰の衰退  片山紀子(国士舘大学)
アメリカの学校では,体罰を教育の一つの道具として,しかも重要不可欠な道具として宗教的な意味付けでもって使用してきたわけであるが,そこには体罰を正当化し,体罰を受け入れる土壌としてのエートスが十分すぎるほど伏在していた.
だが今や,体罰を受け入れるエートスに支えられた体罰も,過去に比してその地位は大きく失墜している.その変革は,教育の大衆化,公教育化に伴う教育制度の条件整備とそれに付随するチャイルド・アビューズを含めた諸々の視点からの教育環境の整備によりもたらされたものと考えられる.公的に教育制度を充実させ,それぞれの方向から教育条件を漸次整備し,子どもに体罰のモデリングを回避させる等したことが学校から体罰を遠ざけ,そうしてもたらされた新しい価値観が体罰からの脱却をさらに促してきたことになる.
その結果,今日学校の規律を維持する方法は,より合理的でかつ公正・公平な方向を目指し,州によって体罰が禁止されているか否かを問わず,体罰以外の方法(オルタナティブ)を採る傾向にある.さらには,従来からの懲罰的な懲戒方法のみに依存せず,子どもの内部に自律的な規律を形成しようとする方向にある.



第2部

@運動部活動における体罰が子どもに及ぼす影響  阿江美恵子(東京女子体育大学)
1989年以降運動部指導者の暴力について4回調査を行った.その結果,殴る指導者の要因を数量化II類で分析すると,年齢(20代,30代),礼儀の重視,集団種目,規則重視の順であった.小中高体験群は大学でその種目を選択する者が一番少なく,種目を変更するものが一番多かったが,中高体験群ではほとんどが大学で同種目を継続した.調査対象者に将来の指導行動を予想させると,殴らないと答えたものが体験群21%,非体験群35%であり,殴る・殴るかもしれないは,体験群25%,非体験群19%(596名対象)と,体験したもののほうが有意に暴力を用いると回答した.このことで,暴力は次の世代に循環すると指摘できる.また,暴力に耐えた成果は,「精神的に強くなった」68%,「技能の向上」37%,「大きな大会に出場した」25%であった.
教育現場では,体罰禁止(学校教育法11条)を常に主張してきたが,一部の運動部活動では競技力向上の手段として暴力を使ってしまった.しかし,体育・スポーツ人はそれに踊らされることなく,スポーツ本来のあり方を冷静に示す必要があると主張したい.

A運動部活動の指導者が有する体罰に関する現実的課題  小田佳子(東海学園大学)
本報告では.自身が中学校教育現場に15年間勤務した経験に基づき,教育現場および運動部活動における体罰問題について,いつ.どのような場面で.なぜ.体罰が起こっているのかを具体的な事例から紹介し.教員が有する学校現場での現実的な課題を示す.
    事例1:勝利至上主義に基づく部活動の遠征や練習試合の場面から.
    事例2:部活動での規律.指導方針の指導の場面から.
    事例3:生徒指導に関わる問題行動と運動会の場面から.
    事例4:特別支援を要する生徒(発達障害)と学校生活の場面から.
上記の各事例から「体罰」に至った経緯を問題提起する.そして.所謂.熱血教師が何を考え.どのように行動しているかを考察する.
さらに.運動部活動における「体罰」問題が.学校教育現場だけの問題として位置づけられるものではなく.社会問題として大きく取り上げられ.運動部活動が学校教育とって必要なのかという.部活動の存立そのものを問う必要のある極めて重要な問題であるという立場から.教育現場が抱える教員の物理的・時間的・精神的に過酷な勤務状態を報告し.「体罰」問題の浮上による.更なる教育課題を報告する.ここから.未来的思考として.体罰厳禁を前提とした「学校教育」および「部活動」に関する具体的対策や提言を分科会でのフロアと共に検討を試みる.



B運動部活動の制度史と今後の展望  神谷 拓(宮城教育大学)
本報告では.運動部活動に関わる制度史をふまえて.今後の学校教育における位置づけ方や.指導の在り方を展望する.まず.@これまで体罰が発生してきた背景には.心・精神と関連づけた運動部活動指導があるため.そのような位置づけから脱却する必要があることを示す.次に.Aこれまで各学校で取り組まれてきた教育課程編成においては.教科指導と生活指導に関わる教師の専門性(陶冶と訓育)が前提にされてきたことをふまえ.運動部活動も.そのような専門性が発揮される教育活動であることを示す.合わせて.B70年代に制度化された必修クラブの問題や課題を確認し.運動部活動は教育課程外に位置づけられることで.はじめて自主的.自治的な活動となり得ることも指摘する.なお.分散会では.これらの観点をふまえた運動部活動指導の原理(私案)を示すことで.さらに議論を深めたい.私は.「学校卒業後に自分たちでスポーツクラブをつくり.運営できる力」を身につける場として.運動部活動を捉えている.そして.そのような力をつけるためには.活動の過程で生じる.@練習・試合.A組織・集団.B場・環境に関わる課題を.子どもたち自身の手で.自治的に解決させていく必要があると考えている.


<ラウンドテーブルについて>

■日時:6月23日(日)9:30-11:30
■ラウンドテーブル開催趣旨および会場
@「動きのコツを学ぶ柔道授業−教具を活用した学習プログラムについて考える−」
○提案者
有山篤利(聖泉大学)・籔根敏和(京都教育大学)・藤野貴之(京都府立乙訓高等学校)・中嶋啓之(京都産業大学附属中・高等学校)・黒澤寛己(京都市立塔南高等学校)・中村聡(京都教育大学附属京都小中学校)
○設定趣旨
 柔道には「倒れる(倒す)」、「空中で回転する(回転させる)」など、恐怖感を伴った非日常的な動きが多く含まれる。そのため、技能を学ぶ際に、学習者に動きのコツを伝え、運動感覚を養うことについては、他の種目以上に配慮が必要である。しかし、これまでの柔道授業では、教師が解説・示範した典型的な動きの「カタチ」を反復練習する指導形式が一般的であり、動きのコツや運動感覚を体得するための学習プログラムの工夫が十分になされてこなかったのではないだろうか。
 そこで、今回のラウンドテーブルでは、柔道の動きのコツを伝え、基礎的な運動感覚を養う授業の工夫として、様々な柔道授業用の教具と指導プログラムを実技を交えて提案・紹介するとともに、参加者自身が実践の中で工夫してきた指導教具についても情報提供いただき意見交換を行いたいと考える。
○会場:メイプル・センチュリー・ホール2階柔道場

A小学校教師の体育授業の力量形成を支える現職研修の在り方を考える
○提案者(敬称略)
木原成一郎(広島大学)、松田恵示(東京学芸大学)、原 祐一 (岡山大学)、森敏生(武蔵野美術大学)、加登本仁(滋賀大学)
○設定趣旨
松田らの研究グループは、東京都、三重県、岡山県の小体研や国立教育政策研究所等と共同で、体育科を指導する小学校教員に求められる初任時から定年退職時までの「成長モデル」について職能意識を実証的に明らかにする調査を行った。その結果、小学校教員が、「体育科の指導」「教師の成長」「研修」などについてどのような意識を持っているのかについて把握するとともに、小学校教員のキャリアパターン、ライフサイクルを明らかにするにいたった。このラウンドテーブルではその結果から求められる現職研修の制度及びプログラムを提言する。
木原と森らの研究グループは、子どもの運動習慣の著しい低下や肥満の増加といった社会問題を背景として、小学校体育の充実に向けた現職研修の改革に、国を挙げて取り組んでいるイギリスのスコットランドに現地調査を行った。2006〜12年度までスコットランド政府の援助を受けた「スコットランド小学校体育プロジェクト」(SPPEP)は、質の良い体育授業を週に2時間必ず実施するという目標の実現に向けて、現職教育の改革に取り組んできた。このラウンドテーブルでは、そのプログラムの中心的人物であるMike Jess氏(エジンバラ大学)をお招きし、その成果と課題をご発表いただく。
学級担任として全教科を教える小学校教師にとって、継続的な体育授業の力量形成が困難であることは世界共通の悩み事である。日本の調査結果に基づく提言とスコットランドのプロジェクトの成果を比較することを通して、この課題に応える小学校体育授業の現職研修のあり方について検討してみたい。
大学教員の方はもちろん、小学校体育授業の改善を志す教師をはじめ、学生・院生、初任・若手教師を指導する立場の先生方にご参加いただき、積極的な議論をして頂ければ幸いである。
○会場:メイプル・センチュリー・ホール1階大教室

Bプレ(イ+ト)ーニングのすゝめ
〜K小学校におけるGボールを活用した体つくり運動〜
○提案者(敬称略)
田村元延(白貎大学・常葉学園短期大学非常勤),長谷川聖修(筑波大学),檜皮貴子(駿河台大学)
○設定趣旨
 元来必修である「体つくり運動」は,昨今必修化されたダンスや武道の領域のように,大きな話題にはならない。しかし,その指導内容を吟味しないと、いわゆる「二極化」傾向を益々増幅しかねない.今こそ,運動の苦手な子の視点からも,多面的な遊び(play)とバランスの取れた体力づくり(training)の融合(pla-ining)を試みることが重要であると考えた。
 筆者らは、K小学校の中学年を対象に、Gボールを用いた体つくり運動の単元を指導した。そこでは、からだを丸ごと使って遊ぶ、友達と協力して取り組む、多様に転び危機回避能力を身につけることを目指した。この様子を紹介しながら、揺さぶられる楽しさ、共に弾む心地よさ、転んでも笑い飛ばすたくましさ、こうした体験を参加者と共有したい。簡単な運動内容なので、そのままの服装でも参加可。もちろん実技については見学も可。
○会場:メイプル・センチュリー・ホール3階多目的フロア

C小規模校・複式学級における体育授業の課題について
○提案者(敬称略)
清水将(岩手大学)・八重樫元亨(岩手県葛巻町立小屋瀬小学校)・清水茂幸(岩手大学)
○設定趣旨
 岩手県は、複式学級の小学校が約3割存在し、小中併設校も多く、少人数指導に課題を抱える地域です。へき地教育では、学校や教室をつなぐ遠隔的な授業の試みもおこなわれており、離島などの地理的に集まることが難しい条件の中でもICTの発展によって仮想的に集団で学ぶことが可能になりました。しかし、体育の授業では、インターネットを用いた授業の方法論ですべての課題解決をはかることは難しく、一方で統廃合により人数を確保しても、スクールバスの利用によって生活における運動量が低下して肥満傾向が強まることも報告されています。本ラウンドテーブルでは、実際に勤務されるている先生に小規模校における体育授業の現状をお話ししていただきながら、小規模校・複式学級または小中併設校の体育授業の課題やあり方について皆様と議論したいと考えております。
○会場:メイプル・センチュリー・ホール5階第1会議室

D体育授業における教育内容・教材の順序構造とその構成方法について(3)
―バレーボール実技の指導について―
○提案者(敬称略)
竹田唯史(北翔大学)・進藤省次郎(北翔大学非常勤講師)・佐藤亮平(北海道大学大学院)・近藤雄一郎(北海道大学大学院)
○設定趣旨
 体育科教育の中心的課題として,各スポーツの技術・戦術の指導が位置づけられている.この技術・戦術の指導については,これまで多くの研究や実践がなされてきている.しかし,依然として技術・戦術の内容・教材・方法の概念が曖昧で,それらを如何に構成して,すぐれた授業(わかる・できる授業)を作り上げていくかという方法論については未確立のままであると考える.
 我々は,1985年頃より,スポーツの技術・戦術学習における教育内容(認識対象)・教材(習得対象)・教授方法・評価についての教授学的研究を進めてきた.第16回・第17回大会においては,我々の基本的な研究方法論について発表し,スキー,サッカー,フラッグフットボールなどの教育内容・教材およびその教授プログラムを提示することで議論を深めてきた.本ラウンドテーブルでは,「バレーボール」を取り上げ,オーバーハンドパス・アンダーハンドパス(レシーブ)の基本的な技法の教育内容・教材構成について紹介し,実技を通して参加者の方々と議論し検討を進めたい.
 尚,基本的な理論について,資料を用いて報告を行うので,見学参加も可能である.
○会場:メイプル・センチュリー・ホール3階アリーナ

E小中学生を対象とした高く遠くへ跳び越えるハードル走の授業
○提案者(敬称略)
大塚光雄(立命館大学)・大友智(立命館大学)・伊坂忠夫(立命館大学)・渡邊正樹(立命館守山中学校)・伊藤章(大阪体育大学)
○設定趣旨
 これまで私たちは,小学校高学年だけでなく,中学生においても,ハードル走の記録はハードルを「高く遠くへ跳び越える」技能と関係することを明らかにしてきた.一方,改訂学習指導要領の中では,学習内容の系統化・体系化が図られ,ハードル走の授業においても身に付けるべき技能が発達段階ごとに示されている.
 本ラウンドテーブルでは,実際の実技を交えながら,高く遠くへ跳び越えるハードル走の指導が学習指導要領に示された技能目標を達成することができるかについて議論を深めて参りたい.
○会場:メイプル・センチュリー・ホール4階中教室

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